最終選考課題 スピーチ

地球市民運動メッセージ

私は、人が抱く夢の力を信じています。美しく偉大な夢は、人を美しく偉大にします。個人や企業に夢があるように、国にも人類にも夢が必要です。夢は彷徨を冒険にし、無気力を情熱に変え、バラバラの心を一つに集めます。

私は、随分前から地球市民スピリットを伝えてきました。このスピリットの本質は、とても単純です。私たちは、特定の国家や人種、宗教に属する構成員である以前に地球の市民だから、地球のことを考えて生きていかなければならないのです。異なる肌の色をもち、異なる言語を使っていても、私たちを1つにつないでくれる共通点は、地球という星で共に暮らしている同じ人種だということです。

私は、地球で暮らす全ての人が地球市民の意識を持ち、生活すべきだと思います。原油の流出や核実験を防ぐための危険を冒してデモを行う勇敢なグリンピースの活動家だけが地球市民の人生を送っているのではありません。大事なのは、私たちにとって地球は、いえであり、私たちの物だという認識が必要だという点です。

より良い地球市民生活のための第一歩は、自分の人生に主人意識と希望を持つことです。自分の人生に主人意識や希望がない人は、地球にも同じ考えを持つようになります。「地球の問題はだれかが解決してくれるだろう。リーダーや専門家がいるだろう」と受動的に考えたり、「誰が何をしても、世界はなにも変わらない」と悲観的に考えます。自分を信じられない人は、ほかの人や世界を信じることも希望を持つことも難しいです。

私は自然と一つだと感じ、自分の人生の真の主人になると、地球と人類の問題は自分自身の問題だという切実さが生まれないはずがありません。そのため、小さなことでも地球と他の生命の為に自分に出来ることはなんだろうかと真剣に考え、実践しようとする意志が生まれます。自分の持てる知識、金、力、才能、時間などを活用し、人々や共同体に役立つ生き方をしようという思いになります。各自が自分自身の希望になるとき、私たちは自分の希望になることができます。一人ひとりの人生に新たな道が開けるとき、地球と人類にも新たな道が開かれます。

人には、自分だけが幸せに暮らすのではなく、ほかの人の面倒を見たり手伝ったりして皆を幸せにしようと思う心があります。そのような心が「弘益(ホンイン)」であり、人類のモデルになる一番の近道は弘益の志と精神を回復することです。誰の中にもある弘益精神を、鉱脈を掘るように掘り出し、私たちの人生の中で力強く流していくのです。

弘益のないリーダーシップ、弘益のない経済力や国防力、弘益のない科学、教育、宗教、芸術や文化は、砂で作った城のようなものです。その城がいくら大きくても個人や集団の利己主義という波が過ぎれば押し流されてしまいます。

これからは、弘益精神をもとに大きな夢を抱き、新たに立ち上がらなければなりません。弘益精神は単に国益を守る次元を超え、地球と人類に無限の責任を感じる大きな精神と運動に発展すべきです。一国の国民という認識ではなく、地球の市民であるという思いで真の地球愛・人類愛を実践する地球市民運動を繰り広げていくのです。

地球市民運動は、すべての人の中にある弘益の精神を目覚めさせる運動です。自然治癒力を回復して健康と幸せを自分で創造し、人間の美しく気高い資質を実現しながら生きていこうという運動です。また、自分の夢や価値を見いだし、競争や外的成長よりも調和と内的価値の実現を追求し、健康で持続可能な地球を作っていこうという運動です。このような運動が、個人、家庭、学校、職場、社会全域で起こる必要があります。地球市民精神を持つ人が2020年に1億になってこそ、岐路に立つ人類文明を破壊から希望に転換できるのです。

私は人間性と弘益を教育の中心に置く学校を作ろうと思い、10年の準備期間を経て8年前にベンジャミン人間性英才学校を設立しました。この学校の名前は、アメリカ合衆国建国の父の1人であるベンジャミン・フランクリンからとったものです。彼は人生の目標を人格完成に置き、生涯、弘益を実践しながら生きた模範的な人物です。

ベンジャミン人間性英才学校には、校舎、教科授業を行う教師、教科書、宿題、テストがありません。代わりに様々な分野のメンター500名を備える1年制のオルタナティブスクールです。
生徒が自分のやりたいチャレンジプロジェクトを1つ決め、1年の間にそれを完成させるのがこの学校の中心プログラムです。そのプロジェクトを進めながら、委縮していた子が自分の価値と自信を回復して堂々となったり、自己中心的だった子が人を配慮したり世話をしたりする子へと成長します。子供たちがこのように変わっていくのを見るたびに、私は人類には希望があると感じます。

最初はたった1人の生徒から始めたベンジャミン人間性英才学校が、韓国では7年目になり、2年後に開校された日本でも5年目に入っています。初めはテストも宿題もないこの学校を多くの人がいぶかしげに眺めていましたが、いまやベンジャミン人間性英才学校は教育界の新たな希望として浮上し、注目を集めています。

弘益精神を持つ人が増えると、地球に希望を創造する道になります。これは人類の新たな希望を用意する道です。精神は精神では終わりません。精神が集まればエネルギーになって物質になるように、切に人類の未来を憂える心が集まれば、私たちは本当に偉大なことを成し遂げられます。このような私たちの努力が、新たな精神文明の創造へとつながることでしょう。

地球にあるすべての学校が地球市民を育成し、すべての家庭が地球市民を育て、すべての職場、社会団体、国家と国連、そしてすべての学問の目的が美しい地球環境と人間性の回復、人類平和にあるべきです。個人的・利己的な意識を超え、人間と世界に役立つ地球市民を育成するという偉大で美しい意識の革命が起これば、人類の歴史に永遠に残る喜びとなり奇跡となるでしょう。多くの人が地球の未来と人類平和創造のためのこの歴史的な運動に参加してほしいと思います。そして、2020年には新たな地球村の姿が創り出されることを願っています。